夢みる蝶は遊飛する

彼はこの自分の行動で、さらに自分を苦しめている。

だから、少しでも後悔などさせないように。

彼にとって、私が被害者にならないように。

私が彼を言葉によって傷つけたのであって、彼はそれに対して当たり前の防御反応を示しただけだと。

だから。



「才能もあって、バックグラウンドもあって、そんな先輩に俺の気持ちがわかるんですか?
環境にも恵まれてて・・・・まあ、家族と死別っていうのは哀れすぎますけど。惨めですね」


こんな言動にも、耐えなければいけない。

私は、大丈夫だから。



けれど、嫌でも感じさせられた。

他人から見れば私の境遇は哀れむべきもので、私は可哀想な人間なのだと。

投げつけられる凶器を跳ね返せる、鋼のような心など持っていない私は、憐憫の込められた視線や言葉を、すべて吸収するしかない。


ただ、ひとつ誤解を解いておきたかった。


「私のこと、恵まれてると思ってるならそれは間違い。
こんなところじゃプレイしたくないのかって言ってたけど、私はしたくないわけじゃなくて、できないの」

「は?」


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