夢みる蝶は遊飛する
「故障。よくある話でしょう?」
できるだけ軽く、けれど事実だということを伝えるのは難しかった。
「どこが?」
「膝」
一言で答え、そして自分の右膝に視線を落とす。
いつもとなんら変わりはないそこが、一瞬にして腐り落ちるような幻覚を見た気がした。
「だからマネージャーなの。これでも私のこと、才能もあって恵まれてるって言える?
それに・・・・」
ふ、と鼻で笑って、そして続けた。
「バックグラウンドなら、薄くんにもあるじゃない。私とまったく同じものが」
彼が決してそれを利用としないだけで。
それは私にもあって、けれど自分の意図しないところでそれが効力を発揮しているのかもしれない。
だからこそ私には最高の環境が与えられたのかもしれないという疑念が、今でも心にある。
実力ではないところで評価されてしまうことの悲しさと一緒に。