夢みる蝶は遊飛する
「じゃあ、自分は100%実力で認められてたって、断言できますか?」
一瞬、息がつまった。
どこか諦めに似た感情が、頭の中をよぎった。
「残念だけど、そう言い切れる自信はないかな」
「どうしてですか」
「自分にあの紅いユニフォームを着る資格はあったのかって訊かれれば、驕(おご)りでも自信過剰でもなくて、即答できるけどね」
皇ヶ丘学園バスケ部は、無慈悲なまでに実力主義だ。
そのプレイヤーの能力以外で判断することなどありえない。
バックグラウンドありきでプレイヤーを見るのは、部外者ばかりである。
「でも時々、考えることがある。
私はミニバス時代の大会でスカウトマンの目に留まったっていうことになってるけど、本当は違うかもしれないから。私を見て有望だと思うより先に、私の父親の名を知ってから私に興味を持ち始めたんじゃないのかなって」
もしそうであれば、私に皇ヶ丘学園でプレイする権利が与えられたのは、私の力によるところではないのかもしれない。
父が自分の名を使って、私を売り込んだわけではないのは確かだから。