夢みる蝶は遊飛する

「俺が、高橋先輩だって言ったら、驚いてましたよ。そんなはずないって、あの子は長谷川っていう名前のはずなのに、って」


その発言の意味をはかりかねて、訊いたらしい。

どうしてそんなことを言うのか、なにを言っているのか、と。

そして、学生時代の友人の葬儀に参列したこと、そこにいた友人の娘が私にとても似ていること、それなのに名字が違うこと。


「でもその時に、『あいつの娘は、皇ヶ丘学園でバスケしてるって聞いてたから、やっぱり違うのか』って言ってて、先輩が東京からここに来たことを思い出したんです。
それで調べてみたら、案の定」


私が、かつて紅の魔女と呼ばれるチームにいたことを知ったのだろう。

個人情報とは言え、調べれば名前と写真くらいはすぐに出てきてしまう。



「それなりに有名で才能のあるプレイヤーだったのに、どうしてここではバスケをやらないんだろうって考えはじめたら止まらなくて。
・・・・だから、確認せずにはいられなかったんです」



彼の言う“確認”とは、あの時のことを言うのだろう。

確信に近い予感を胸に抱え、タイミングを狙って。


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