夢みる蝶は遊飛する
「その瞬間から、俺の中で先輩は敵になりました」
再びその瞳に憎しみの炎が灯るのがわかった。
「俺を裏切った黒木と、その黒木とかぶる先輩、どっちも憎いんですよ」
少し経歴がかするくらいの私と黒木貴史を、そこまで重ねてしまうというところに恐ろしさと、悲しさを感じた。
なにも見えていないのだ、彼には。
どちらかと言えば似ているのは私と薄くんであるし、私にはもうバスケという武器はない。
私にもう、自分を守るすべはない。
すべてが繋がった先にあったのが、こんな真実だとは思わなくて。
私には、彼の想いを受け止めることはできそうになかった。
「それで、その先になにがあるの? どうなりたいの? どうしたいの?」
矢継ぎ早に三つの質問を投げかけたけれど、そのどれにも彼は答えなかった。