夢みる蝶は遊飛する
「過去を引きずるなとは言わない」
私に、そんなことを言う権利などあるはずがない。
ずっと過去だけを見つめて生きてきていたのだから。
「でも、今のままじゃなにも変わらないじゃない」
私は少しずつ、現在と未来について考えることができるようになっている。
そこに、両親の姿は無いけれど。
「過ぎたことにばかり目を向けて、文句を言って、本当に言いたい人には届けられない言葉を関係ない私に言って、なにがしたいの?」
言えばいいのだ。
ずっと信頼し、支え合ってきた友人として、自分の想いを伝えればいいのに。
伝えたい人が、近くにはいなくても存在しているなら。
「薄くんの過去に、私は関係ない」
そうきっぱりと言い切った。