夢みる蝶は遊飛する
今の彼は私に感情をぶつけることで心の均衡を保とうとしている。
けれど、私には彼を支えて立たせ続けられる力はないし、そんなことをする義理もない。
「自分のことは、自分でどうにかして」
冷たい瞳で、突き放すような言葉を吐いた。
同情や共感をしたところで、なにも変わらないのであれば。
むしろ私は一切関わらない方がいい。
これは、彼と黒木貴史の問題だから。
「最後にひとつ。
皇ヶ丘学園バスケ部は、たとえコネで入ったとしても、実力が伴わなければついていけない。親の七光りなんて関係ない。本当に、能力だけでのし上がるしかないの」
血を吐くような辛い練習を乗り越えた先にあるのは、間違いなく栄光だ。
けれど、それを掴みとるまでの道のりは、言葉で言い表せるものではない。
私がバスケ選手の命とも言える膝を壊したように、払う代償も大きい。
だからこそ、生半可な気持ちではやっていけないし、辞めていく人もいる。