夢みる蝶は遊飛する
「今でももし、黒木貴史が皇ヶ丘学園のバスケ部でプレイしてるなら、少しくらいは認めてあげて。その努力と、能力を」
県選抜の代表に選ばれたのが、よこしまな考えによるものであったとしても。
今もまだ、皇ヶ丘学園で夢を追いかけているなら。
薄くんの想いを受け止められるのは、きっと黒木貴史しかいない。
じっと見つめていると、彼は恐る恐る視線を上げ、そして私と目を合わせた。
もう言うことはない。
いろいろな想いを込めて少し微笑みながら頷いて、そして私は部室を出た。
背すじを伸ばして、コンクリートの階段を下りる。
時刻はもう、20時に近くなっていた。
これですべてが解決したわけではない。
これはいわば通過点だ。
彼がこれからどうするのかは、私にはわからない。
けれど、彼なりの答えを見つけられたならいいと思う。