夢みる蝶は遊飛する
共犯者
暦の上では春となったものの、真冬の寒さが続いている。
まだ二月なのだから、当然と言えば当然だ。
けれど、寒さよりもなによりも今私を悩ませているのは、二月最大のイベント、バレンタインデー。
聖ヴァレンチヌスの祭日だとか、製菓会社の陰謀だとかそんな聞き飽きたことを並べたいわけではない。
ただ、初めて参加するバレンタインというものに戸惑っている。
それだけである。
もうひとつ付け加えるとしたら、そのイベントにおいての自身の身の振り方。
今年の私には、果たさなければならない使命がいくつもあるのだ。
「沙世、おはよう」
「おはよ」
私よりも後に登校してきた沙世は、ゆるい巻き髪を揺らしながら私の方へやってきた。
「ね、沙世はなに作るの?」
私が指差すその先を、沙世の目がたどっていく。