夢みる蝶は遊飛する
「クラスの子たちと女バスにはブラウニー、男バスはクッキーにしようかなって」
結局、レシピを調べてみて、比較的難易度の低そうなその二品に決定した。
材料を混ぜて焼くだけだと聞くと簡単なように思えるけれど、実際にしてみるとどうなのだろう。
プロの言う“簡単”が、私のような素人にとっての“簡単”と一致するわけではないことくらいわかっている。
男子は甘いものが苦手な部員でも大丈夫なように、甘さをひかえめにしたクッキーに決めた。
絞り出しはうまくできそうにないので、型抜きで。
こうして工程を考えているだけだと楽しくも思えてくるけれど、きっと作業をはじめた途端にそんな思いは吹き飛ぶだろう。
「できれば沙世とは被らないようにしたいんだけど、沙世はもう作るもの決まってるの?」
作ったものが被りたくないというよりは、被ってしまって比べられたくないというのが本音だ。
クリスマスのときのケーキ作りで、沙世の力量は十分理解している。