夢みる蝶は遊飛する
「で、なに? 相談って」
沙世は辺りを何度も念入りに見回した。
そして前髪を何度も手で直したり、カーディガンの毛玉を取ったりと、そわそわとして落ち着きがなくなった。
再び周りを確認してから、沙世は小声で囁くように、けれどはっきりと言った。
「あたし、バレンタインに告白する。・・・ヒロに」
なんとなく、そのことについてだというのはわかっていた。
沙世の、ヒロくんにむける想いについても、私は気づいていた。
憎まれ口を叩いていても、その瞳が告げている。
どんな行動をとっても、誤魔化せない。
沙世がずっとあたためてきたのは、それほどに強い想いなのだろう。
想ってきた時間の長さは関係なく。
そして沙世は真剣な表情で、私に言った。
プロデュースしてほしい、と。
その意味を問おうとしたところで、ウエイターが飲み物を持ってきたため、話は中断された。