夢みる蝶は遊飛する
「それで、さっきのことだけど、どういうこと?」
ウエイターの姿が見えなくなったところで、もう一度話を再開する。
「つまりね、協力してほしいわけよ」
沙世は照れを隠しているのか、少し横柄に見えるような仕草で、ココアの入ったカップに口をつけた。
けれど沙世は猫舌だから、それは振りだけで実際に口に入れていないことがわかった。
「協力? 私が協力しなくても・・・・」
「あっまーい!」
協力するべきことではないと思うし、する必要もないと思ったけれど、沙世はそれを否定した。
身を乗り出した沙世は、一瞬経ったあとに我に返ったらしく取り繕うように、座ってまたココアを飲む振りをしていた。
そして、ヒロくんの好きなタイプが、私のような人間だと言いはじめた。
それは、私が思っているものとは違う。
私とヒロくんは、すこしだけ似ている部分がある。
私たちはお互い、自分と同じ種類の人間には惹かれない。
友人以上の感情は、互いに持っていない。
そんな話をしたことはないけれど、なぜかわかるのだ。