夢みる蝶は遊飛する

「それで、さっきのことだけど、どういうこと?」


ウエイターの姿が見えなくなったところで、もう一度話を再開する。


「つまりね、協力してほしいわけよ」


沙世は照れを隠しているのか、少し横柄に見えるような仕草で、ココアの入ったカップに口をつけた。

けれど沙世は猫舌だから、それは振りだけで実際に口に入れていないことがわかった。



「協力? 私が協力しなくても・・・・」

「あっまーい!」


協力するべきことではないと思うし、する必要もないと思ったけれど、沙世はそれを否定した。

身を乗り出した沙世は、一瞬経ったあとに我に返ったらしく取り繕うように、座ってまたココアを飲む振りをしていた。


そして、ヒロくんの好きなタイプが、私のような人間だと言いはじめた。

それは、私が思っているものとは違う。


私とヒロくんは、すこしだけ似ている部分がある。

私たちはお互い、自分と同じ種類の人間には惹かれない。

友人以上の感情は、互いに持っていない。

そんな話をしたことはないけれど、なぜかわかるのだ。

< 522 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop