夢みる蝶は遊飛する
「で、私はヒロくんにお菓子をあげてもいいのかな?」
昼休み、女子同士での力作の交換会が終わった。
欠席している生徒二人分、私の手元にはブラウニーが余っている。
「余ったんだけど、これ、ヒロくんにあげてもいい?」
一応沙世に許可を取る。
「どうしてあたしに訊くのよ。勝手にあげればいいじゃない」
沙世は照れて少し目元を赤くしながら、できるだけすました表情で目を逸らした。
「わかった、じゃあ、はい、ヒロくん」
そうして余りを、一緒に弁当を広げている彼に渡した。
「え、それ余りってことは、亜美ちゃん俺にくれる気はまったくなかったってこと?」
「うん」
ヒロくんの問いに、はっきりと頷く。