夢みる蝶は遊飛する

「だって、最初から私のなんてヒロくんには必要ないって思ってたから」


余計に沙世を照れさせるようなことを言ってみた。


「ちょっと待って、俺だけ話についていけてないんだけど」


そう言った須賀くんに、ヒロくんがこそこそと耳元でなにかを話す。

目を見開いて驚愕の表情をした須賀くんが次にとる行動はわかっていた。



「須賀くんは、部活のときにもうひとつあるから、これはみんなには内緒ね」


そう言って、唇の前に人差し指を立てる。


「え、これ俺がもらっていいの? やった!」


絶対に叫び出して、どうして教えてくれなかったんだと拗ねる彼が容易に想像できた。

だから気をそらしてブラウニーに向けさせたのは成功だったはずだ。



薄い色の瞳を輝かせてリボンを解くその姿は、まるで子どものようだった。

そして指でつまみだしたブラウニーを大きな口を開けて一口食べる。


その後、彼が私にくれた満面の笑みは、どんな称賛の言葉よりも輝いていた。



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