夢みる蝶は遊飛する
昼休み。

今日は沙世と二人きりだ。

須賀くんとヒロくんはクラスの男子に誘われて、体育館にフットサルをしに行った。


「亜美、今日元気なくない?」


沙世が相変わらずクールな眼差しで私を見た。

決して冷たいというわけではなく、何となく色っぽさを感じるそれは、私には明らかに欠けている。


「そう? 普通だけど」

「昨日のこと考えてんの? マネになる、ならないってやつ」


グラタンのエビをフォークでつつきながら、沙世は言った。

沙世にはとりあえず、昨日のことは話してある。

皇ヶ丘のくだりは省略したけれど。


「自分としては、答えは出てるのにね」


柏木さんがそれじゃ納得しないみたい、と苦笑してそう返した。


「舞はしつこいからね。粘り強いっていうか」


その口調に、疑問を持った。


「柏木さんと知り合い?」

「幼馴染み。幼稚園から一緒。この学校そういう人多いの。ま、田舎だし」


幼馴染がひとりもいない私にとって、その響きは羨ましくさえあるのだけれど、沙世はつまらなそうな顔をしている。

伏し目になると、沙世のマスカラでコーティングされた長い睫毛が影を作っているのがわかる。



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