夢みる蝶は遊飛する

「沙世、春休みの課題はさすがにもう手をつけてるよね? 講座もあるんだし、早めに終わらせておかないと、またこの前みたいになるよ」


冬休み明けに、濃い隈のできたやつれた顔で登校してきたことを思い出し、少し笑ってしまった。


「そんなもの、やってるわけないじゃない」

「自信満々に言わないで」

「だってあと一ヶ月で部活引退なんだから、課題とかどうでもいいことに時間を割きたくないの」

「どうでもいいことって・・・・」


この学校では、ほとんどの運動部の部員は4月下旬の大会をもって引退する。

稀に、夏や秋まで残る生徒もいるけれど。

引退したら、勉強一筋になるのだそうだ。

それまで部活に注いでいた熱意と、培ってきた集中力を、今度は受験勉強に傾けて。



受験のためにと、途中で部活を辞める生徒はほとんどいないらしい。

最後まで燃え尽きたあとに、また新たな炎を燃やして勉強に取り組むのだ。

今年東大に現役合格した生徒は皆、最後まで部活を続けていたらしい。

あくまでそれは噂だけれど。

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