夢みる蝶は遊飛する

「だいたい、終業式の日まで授業があるとかおかしくない? 4限までみっちり授業で、午後に式なんて眠くなるだけだし。あたしは早く部活がしたいのよ」


その意見には賛成だ。

よりにもよって今日は生物、日本史、古典、世界史、と睡魔を誘う授業しかないのだ。


「まあ、授業を睡眠時間に充てて、そのぶん思いっきり部活やればいいんだけど」


その言葉に、微笑みのような苦笑のような、曖昧な表情で応える。


羨ましくてたまらないのだ。

精一杯、なにかをするということが。


私も部活は好きだし、マネージャーとしての仕事も嫌いではない。

ただ、私はなにを“思いきり”やればいいのだろう。

それが、わからない。


全力で雑務をこなし、部員の様子を見ることにすべての力を注ぐ。

どうしても、滑稽なように思えてしまうのだ。


私はたぶん、バスケ部の部員たちに引け目を感じている。

そして、それを認めたくないとも思っている。

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