夢みる蝶は遊飛する
私の過去の栄光なんて、ほんの数人しか知らないことで。
そしてそれを隠そうとしているのは紛れもなく私自身なのに。
それなのに、自分は本当はここにいる誰より能力も価値もある人間だったのだと主張したくてたまらなくなるときがある。
私は本来ならばプレイしている側の人間で、こんなところで燻っていていいわけがないのだと思うことも。
そんなことを考えてしまう自分が醜くて、嫌でたまらなくなる。
けれどどうしても、私は私を諦められないでいるのだ。
沙世に限らず、須賀くんやヒロくん、バスケ部の部員たちが、必死に汗を流している姿は、私には眩しくて痛すぎる。
その時、担任の佐竹先生が教室に入ってきた。
「先生来たから、席に戻るね」
その場を離れる口実ができたため、すぐに自分の席へ戻った。
あと少しでも長くここに居れば、私の中の黒い感情が露見してしまったかもしれない。
それはどうしても見られたくなかった。
私は以前より、感情を隠すのが下手になった。
少し素直になれたのかもしれないと喜ぶ半面、感情をさらけ出すのをまだ恐れてもいる。
癒えていない傷をまたえぐられたら、もう立ち上がれないかもしれないから。