夢みる蝶は遊飛する
3限まで授業が終わり、もうすぐ4限がはじまるというところで教室に入ってきたのは、いつもの初老の世界史教師ではなかった。
若い男性教師。
それは、以前私を保健室まで抱えながら連れて行ってくれた、林先生だった。
チャイムが鳴り、全員が席に着く。
皆、なぜこの教師がいるのかと控え目に言い合っている。
クラス中を見まわしたところで、林先生が口を開いた。
「いつもの先生は体調不良で休み。だから今日は自習!」
ささやかな歓喜の声が上がる。
一年の最後まで、あの睡魔を誘う授業を受けなくてもいいということに喜んでいた。
「原則、世界史の春休み課題を各自進めること! 持っていなければ他の教科の勉強でも可。席をかわるのは自由だけど、私語は隣のクラスに聞こえない程度にすること。世界史についての質問のみ受け付ける。
以上!」
各々、机からプリントやノートを引っ張り出し、それぞれ仲の良い友人のもとへ散らばっていく。
それでも私語は囁き程度と、注意を守っている。