夢みる蝶は遊飛する
「ずるい! 俺も教えてもらう!」
その場に満ちていた微妙な空気を破ったのは、須賀くんの声だった。
私が二人に勉強を教えていると勘違いしたらしく、自分もと割り込んできたのだ。
須賀くんがヒロくんの隣の席に着いたため、私と沙世は椅子を後ろに向けて座りなおした。
これはもう、勉強をする体勢ではない。
けれどこの教室の中はどこもそんな風で、先生もそれを気にしている様子はない。
緊張しているような顔で世界史の課題をめくりながら、けれど弾んだ声を出す須賀くんに、どこか違和感を覚える。
「高橋さん、エリザベス女王についてどう思う?」
そして、彼は私にそう訊ねた。
言っている意味がわからずに問い返した私に、彼はもう一度同じ質問を繰り返した。
エリザベス女王についてどう思うか、と。