夢みる蝶は遊飛する

これから部活だという沙世と一緒に昇降口まで歩く。

バスケ部は、今日は外での練習のため私は参加しない。

けれど、桜井くんに借りていた本を返すために、彼のいる体育館前まで一度行かなければいけない。


「なんで亜美はカメラ持ってこなかったのよ」

「だって、みんなと写真撮るなんて思ってなかったから」


まさか、この2年2組が最後だからと言って、記念撮影をするほどのことだと思っていなかったのだ。

クラスの大半の人がカメラを持参してきたというのに、私は持ってきていなかった。


「しょうがないから、あたしの焼き増ししてあげる」

「ありがとう」


下駄箱から茶色いローファーを取り出す。

それを床に置いたとき、なにか白っぽいものが中に入っていることに気がついた。

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