夢みる蝶は遊飛する
「みんな、今日、このために集まってくれたの?」
私の問いかけに、舞が大きく頷く。
「当たり前じゃない! そのためにこんな飾り付けまでしたんだから」
改めて見回してみると、普段は事務用の長机やパイプ椅子しか置かれていない無機質な部屋が、色とりどりに飾られている。
色紙で輪を作ってつなげたものが、ぐるりと壁伝いに一周しているし、黒板には私を中心に、部員全員の似顔絵が描かれている。
コの字型に置かれた机の上には、たくさんのお菓子と飲み物が並べられていた。
「これ全部、私のために・・・・?」
「うん。いつもあたしたちのために頑張ってくれてる亜美のために用意したの」
この部屋の中にいる部員、一人ひとりの顔を見る。
後輩の奈々は、相変わらず子犬のような輝いた瞳でこちらを見ている。
薄くんは、あからさまに私から目を逸らしていたけれど、それでも一瞬だけこちらを向いてくれた。
得意気な顔をしている桜井くん。
そして、須賀くんは照れたようにはにかんでいた。
「ありがとう」
自分の誕生日がこんなに嬉しいものだということを、私は17回目にしてはじめて知った。