夢みる蝶は遊飛する
けれど私はその言葉を、首を振って否定した。
「ううん。私もヒントがなかったらわからなかったと思う。桜井くんがすごく計画的にヒントをくれてたから気づいたの」
「え、俺のヒントにちゃんと気づいてくれてたの?」
「うん。あと、須賀くんのにもね」
彼のはあまりにも不自然でわかりやすすぎたけれど。
「え、どういうこと?」
舞が不思議そうな顔をしている。
私は、あの暗号文を取り出して舞に説明した。
最後の、この部屋の入口にあったダイヤル式ロックキーの鍵のものまで。
ひととおり説明し終わると、舞がため息をついた。
「いや、でもあたしはそんな程度のヒントじゃわからないと思う。やっぱり亜美だからだよ」
そこで得意気な表情をしたのは私ではなく桜井くんだった。
その仕草が気に入らなかったのか、舞が無言で彼の頬をつねった。
引きちぎってしまいそうなほどの力を込めているのが、見ているだけでわかった。
ひきつった笑顔を作りながら、さりげなく二人から距離をとった。