夢みる蝶は遊飛する
入れ替わりで私のそばに来たのは、薄くんだった。
「年明けごろから、この日だけは空けておけって言われてたのはこのためだったんですね」
皮肉っぽいその言い方に苦笑する。
「そんな前から計画されてたの?」
「みたいですよ。
あいにく俺は先輩の誕生日に興味なんかないですけど」
相変わらずな彼のその言葉の棘は、それでもいつかよりもとても丸くなっている気がした。
「俺は4月生まれなんで、一ヶ月分しか年が離れてない人を先輩って呼ぶのも、気に食わないですし」
不遜な言動も、もう私の心に刺さったりはしない。
気のせいかもしれないけれど、彼の私に対する態度は、明らかに軟化したと思う。
彼は、許すことができたのかもしれない。
自分自身と、彼のかつての親友を。