夢みる蝶は遊飛する
清掃が終わり、私は鞄に用具を詰め込んで、家路についた。
肩にかけたこげ茶の合皮のスクールバッグは真新しく、まだ硬い。
皇ヶ丘学園は学校の指定鞄だったため、こちらに転校する際に買い替えたのだ。
新入生のようにも見えて、少し気恥ずかしい。
今日は雨が降っている。
濃い灰色の雲は厚く、空を覆い隠している。
ピンクと白の細いストライプに茶色の縁取りがしてある傘は気に入っている。
けれど、それをさしても気分は少しも晴れなかった。
私が背負った十字架は重いから。
幸せを引き裂いた責任は、大きいから。
ローファーに染み込んでくる雨水に顔をしかめながら、20分の道のりを歩いた。