夢みる蝶は遊飛する
家に帰ってから、ひきだしの奥から私が引っ張り出したもの。
それは須賀くんが言っていた、『紅の魔女』の特集記事が載っている、数年前の雑誌、月刊DUNKだった。
表紙は黒色人種のNBAプレイヤーが完璧なフォームでレイアップシュートをきめている写真。
それを二つに分断するかのように、金で縁取られた真紅の文字。
『史上最強!!負け知らずの紅の魔女、その強さの秘密に迫る!』
開きすぎてくせがついてしまったそのページを開くと。
見開き1ページを使った、『紅の魔女』の写真。
目に鮮やかな、トレードマークの真紅のユニフォーム。
三列に並んでいるうちの最前列のメンバーは、胸の前に両手でバスケットボールを持っている。
私はその列の、右から三番目に写っていた。
真紅に浮かび上がる、純白の番号。
今よりもずっと髪が短くて、幼い顔をしている私。
けれどその瞳は、今とは比べ物にならないほど澄んで輝いている。
唇は凛々しく引き結んでいるけれど、その顔はどこか誇らしそうで、満足そうで。
それが憎くて、悔しくて、私は自分の姿を、握りしめた右手で覆い隠した。