夢みる蝶は遊飛する
「・・・高橋さん」
この角を曲がれば私の家に着く、というところで、須賀くんに呼びとめられた。
振り向くと、先ほどまで隣を歩いていたはずの彼が、私より三歩ほど後ろの方で立ち止まっている。
いつもは優しくこちらを見返してくれる瞳が、今日はなぜだかやけに深く、思いつめているように感じられた。
「・・・・どう、」
「あの、俺!」
どうしたの、と問おうとした私の声は、同時に発せられた彼の声にかき消された。
その言葉の先を待っていたけれど、なかなかそれは出てこない。
けれど続くはずの言葉を、私は知っている気がした。
学校を出たときよりも少し傾きを増した太陽が、アスファルトに影をうつし出す。
そして、それは突然だった。
「俺、高橋さんのことが、好きです」