夢みる蝶は遊飛する
大切そうに、ゆっくりと紡がれた言葉の意味を理解して、私は目を伏せた。
いつかこんな日がくると思っていた、と考えていた自分を何度も、自惚れるなと心の中で叱咤する。
彼の私に対する想いは、私が彼に抱いているものと同じで。
だからこそ、予測できていたのかもしれない。
自分の持っている愛情が、誰かの幸せと結びつくとは限らないのではないか。
そう思いながら生きていた、痛々しいあの頃の傷が、今も私を臆病にさせている。
向けられる好意が確かなものだとわかっていたから、私も安心していられたのかもしれない。
緊張からか、身を震わせるようにして立っている彼に、視線を滑らせた。
そして。
「・・・・・ごめんなさい」
その瞳を、見つめることはできなかった。