夢みる蝶は遊飛する
「帰国子女以外の編入なんてほとんどないし、しかも二年生の夏からって、うちの学校じゃ異例中の異例だから」
「あたしも言ったじゃない。編入試験の結果が相当良かったんじゃないかって噂があるって」
自分の席に荷物を置いてきた沙世が、口をはさむ。
たしかに前、そんなことを聞いた覚えはあるけれど。
「ね。いろんな噂があったから、わざわざ2組に見に行った人もいたよ」
「9月ごろやけにうちのクラス騒がしかったけど、やっぱりあれって亜美のこと見に来てたのね」
大河内さんと沙世が、互いの言葉に頷き合う。
私がこの学校にやってきたことは、自分で思っている以上に珍しい出来事だったらしい。
けれどそんな話をこれ以上聞くのは恥ずかしくて、無理矢理話を変えた。
「沙世と大河内さんは、同じ部活とかなの?」
「ううん。一年生の時に同じクラスだったのよ」
「そうそう。ちなみにわたしは吹奏楽部。あ、わたしのことは綾音って呼んでね」
気さくに笑いかけられ、つられて私も笑顔になる。
「じゃあ私も、亜美で」
嬉しそうに頷く彼女を見て、新しい人間関係を作るきっかけとなってくれた沙世に感謝した。