夢みる蝶は遊飛する
宣戦布告
それから数日は、何事も無かったかのように過ぎていった。
そしてある日の午後、6時間目、教科は体育。
今日は後期の種目選択をする日である。
女子はバスケかバドミントン、男子はサッカーかバスケのどちらかを選ぶ。
私は沙世と一緒に、バドミントンに決めたのだけれど。
「高橋さんっ」
失礼ながら、出た、と思ってしまった。
柏木さんだ。
彼女は誰よりも先に立ち上がり、バスケ選択者の集まる場所へと駆けて行ったのが私の視界に入っていた。
私のことをちらりとも見ずに。
だから正直安堵していた。
けれど今、柏木さんは私と沙世の間に無理矢理体をねじ込み、私の左手をその両手で握りしめた。
「お願い、バスケにして!」
口元がひくりと痙攣するのを感じながら、私はなんとか笑顔を張りつけた。
困っているのが、誰にでもはっきりとわかるような、そんな笑顔を。