夢みる蝶は遊飛する

「なんでこんな時期に怪我なんかするんだよ。大会直前に、気を抜いてたのかよ」

「・・・ごめん」

「謝るってことは、気を抜いてたって認めてるのか?」

「違う! 違うけど・・・・」


もう、聞いていられなかった。

稲垣くんの傷をこれ以上深めるようなことも、怒りをぶつけることで自分をも傷つけている岡田くんも見たくなかった。

だから。



「ねえ、待って」


今度は全員の視線が私に向く。

普段、男子部の方では表立って意見を言わない私が発言することが珍しいのか、若干そこには驚きの表情が含まれている。

それらをすべて見ないようにして、岡田くんだけを視界に入れた。



「今はそんなことを話してる場合じゃないと思う。稲垣くんの怪我は、不注意だけが原因なわけじゃないし、今さら責めてもどうにもならない。だから・・・・」

「うるせえな!」


心臓が、止まったかと思った。

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