夢みる蝶は遊飛する

「たしかに私は、みんなの気持ちをすべて理解することはできないかもしれない」


驚くほどに低い声が出た。

震えてもいない、冷たい声が。

そこにあるのは、怒りとも悲しみとも言えない感情。

抑えきれない思いが、胸を突き破って出てくる。


「でも、ただのマネージャーとか、見てるだけなんて言われたくない」


私のことを、なにも知らないくせに。

勝手に見下されたことが悔しくて、黙っていられなかった。

喚きはじめたらもう、止まらなかった。

その事実を隠そうとしているのは私自身なのに、それでも、なにも知らない人間に、私について言われたくなかったのだ。



「私は、怪我をして悔しい気持ちや絶望は、誰よりも知ってる!」


思わず口をついて出た言葉は取り消せなくて。

けれどそれに対する皆の反応も、見ることはできなかった。


そして私は、無様にも逃げ出した。


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