夢みる蝶は遊飛する
会議室を飛び出してがむしゃらに走って、階段を駆け上って、人気の無さそうなトイレに駆け込んだ。
自分の呼吸音さえ鬱陶しく感じる。
クリーム色のタイルを拳で何度も叩いた。
けれど、その痛みも今の私の目を覚まさせてはくれない。
湧き上がる感情は、抑えられなかった。
「・・・っ・・・・・く」
こみ上げる嗚咽をこらえながら、耐えきれずにその場にしゃがみこんだ。
かたく瞑った目から、堪えきれなかった涙がまぶたを押しのけて流れてくる。
無力でなにも持たない今の私にできることは、薄暗い場所でひとり、肩を震わせながら泣くことだけだった。