夢みる蝶は遊飛する
優しい瞳
うずくまって惨めに泣いていると、チャイムの音が聞こえた。
5限の予鈴だろう。
立ち上がりながら、次の授業はなんだったかと思い出そうとすると、頭がひどく痛んだ。
貧血だろうか。
同じ姿勢でいたためか、膝を伸ばすとそこも痛む。
鬱々とした気分で視線を上げると、鏡が目に入った。
そこに映った自分の顔を見て、長く息を吐いた。
泣いたことが一目でわかる、ひどく情けない顔。
このままでは教室に戻れない。
数十分前の出来事をその目で見ている須賀くんがいる前には、とても。
理由はそれだけではないけれど。
とりあえず本鈴が鳴るのを待って、それから周りに誰もいないことを確認してトイレを出た。
もともと利用者の少ないところだったこともあり、生徒の姿はない。
丸めた背を正すこともなく、足を引きずりながら歩く。
ため息が止まらない。
そして私は、目的としていた場所までたどり着き、少し表情を取り繕ってからその戸を開けた。