夢みる蝶は遊飛する
「ごめんね。私、バドミントンがいいの」
それに沙世が加勢する。
「ちょっと舞、亜美がバスケにしたら、あたし誰とペア組めばいいのよ。ひとりバドなんて、むなしくてやってらんないからやめてよね」
沙世が柏木さんの頭を軽く小突く。
柏木さんは沙世を鬱陶しそうに睨んでから、呆れたようにこう言った。
「あのねえ沙世。沙世は高橋さんの価値を知らないからそんなこと言えるの。一回でも高橋さんのプレイ見たら、沙世もそんなこと言ってられないよ」
「じゃあ、あんたは見たことあるわけ?」
「いや、ないけどさ」
「なにそれ。見たこともないのに価値がどうこうって間違ってるでしょ」
喧嘩になっているように思えて、気が気でなかった。
もし私のせいで、幼馴染みだという二人が仲違いしてしまったら。
「間違ってない。それだけの実績があるから言ってるの。
いい? 高橋さんはね・・・」
「柏木さん」
放っておくと余計なことを喋りかねない柏木さんを、笑顔で牽制する。
「さっき、もうバドミントン選択者の欄に名前書いちゃったし、私はこのままでいきたいんだけど・・・駄目かな?」
異論は聞かない、と目で語りかけた。