夢みる蝶は遊飛する
けなされたら傷つき、褒められたら否定。
まさにそのとおりだった。
残酷すぎる現実の中で、夢さえみられなくなっていた。
けれど一度夢をみはじめたら、もう目覚められなくなっていた。
生ぬるい白昼夢に浸かりながら、惰性のように過去のあやまちについて形だけの懺悔をして。
彼、岡田くんはきっと、そんな私を目覚めさせてくれただけ。
鳴りつづける警鐘に耳を傾けることもせずに、ただ。
とりあえず現実と自分自身を受け入れたふりをしていたこんな私を。
稲垣くんの称賛の言葉を素直に聞くことができないのは、それに気づいていたからかもしれない。
私の心の中にある違和感に。
そう思ってもらえるような人間ではないと口で言って、とりあえずそんな気持ちになってみて。
けれども心のどこかで、傲慢な気持ちが巣を作っていたのだ。
周りを自分よりも劣っていると思い込みたいという気持ちが。