夢みる蝶は遊飛する

「もう・・・・駄目です」


まるで机と同化するかのようにへばりついて、くぐもった声を出す。


「今の私には、なにも無いんです。全部、置いてきたんです。私が失ったそれを持ってるみんなが羨ましくて・・・・。でも、そう思ってる自分を知られたくなくて、納得して満足したふりをしてて」


自分が、周りに対してそういう感情を持っていることは、自分自身は認めている。

ちゃんとわかっている。


けれど、いまだにバスケに未練を持っていて、いつかの情熱の残渣(ざんさ)を胸の内に秘めていることを、皆に知られたくなかった。

現実を受け入れているから大丈夫、と周りを安心させるために微笑むたびに、やりきれない思いが溢れそうになる。


納得しているのは、未来が消えたのは自業自得だったという点だけだ。

自己管理の怠慢、それは弁解のしようもない。



けれど、プレイヤーではなく、コートの外からマネージャーとしてバスケに関わるということに満足などしていない。

当然だ。

私がマネージャーになったのは、そういう形であれバスケに関わっていれば、父との繋がりが途切れることはないと思ってのことなのだから。


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