夢みる蝶は遊飛する
しかし今度は柏木さんもひるまない。


「だってバスケ選択したの、女子は12人なんだよ!? 試合はできるけど、少なすぎるでしょ?」


確かに、一チーム5人でプレイするバスケは、10人いれば試合は可能だけれど。

少ないと言えば確かにそう思う。

沙世を見やると、もうこちらには興味を無くしたようで、指に髪を巻きつけて弄んでいた。

その切り替えの速さときたら。

内心落胆しながら、柏木さんに向き直った。


「でも、一応その人数でも試合はできるし・・・」

「あっまーい! 高橋さん!」


人差し指を力強く立てて、こちらに詰め寄る柏木さん。

そのあまりの剣幕に、私は座ったまま少し後ずさった。


「っていうか、人数とか正直どうでもいいし! あたしは高橋さんがバスケするとこが見たいの!
だから、ねっ、お願い」


顔の前で手を合わせて拝むように頼みこまれても、私は首を縦に振ることが出来ない。

だいたい、私がバスケを選択しなかったのは、ただの意地なんかではない。

バドミントンの方が、運動量が少ないと思ったからなのだ。

決してそれは楽だという意味ではない。

ただ、人数の少ないバスケを選択して、フルタイムで走り回っているより、人数の多いバドミントンを選択して、動く範囲や時間を減らした方が、まだ私の膝には優しいと思ったのだ。

だいたい、バドミントンが楽だなんて思ったら、その部活に所属している人に失礼だと思う。


私がどう答えるべきかと考えていると、後ろから声がした。

しかしそれは、救いを差し伸べるものではなかった。

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