夢みる蝶は遊飛する
「おっ、舞、もしかしてこの子?」
その声に、柏木さんは目を輝かせて頷いた。
「そうだよ、隼人!」
隼人、と呼ばれた人を見ようと振り向くと、案外近くにその顔があって驚いた。
その人は、しゃがんで私の顔を覗き込むようにして見ていた。
「おー、噂の転校生」
なぜか感心したように頷くその人の、さらに後ろから声がした。
「ちょ、隼人。顔近いって」
それは須賀くんだった。
「まあまあ、妬むな祐輝」
「妬んでねえっ」
「んじゃあ僻むな」
「僻んでもねえよっ」
いまひとつ状況が把握できていない私は、その様子を眺めていた。
そしてひとしきり須賀くんをからかった後で、隼人という名の男の子は、私に向き直った。
いつまでも振り向いた状態のままだと首が辛いので、私も体ごとそちらを向いた。