夢みる蝶は遊飛する
「あのさ、高橋さん、だっけ?」
私が頷くと、彼も数回頷いた。
「俺からもお願いなんだけど、バスケ部のマネージャーやってくれないかな」
いい加減、その言葉は聞き飽きた。
うんざりした顔を隠そうともしない私を見かねてか、須賀くんが慌てて間に入ってきた。
「高橋さんっ、こいつ、桜井隼人っていって、男バスのキャプテン」
「そう、俺、キャプテンだからよろしく」
どうして無関係の私がよろしくされなければならないのかは考えたくもないけれど、一応礼儀として、控えめに笑顔だけは振りまいておく。
「キャプテン・・・そう、部活頑張ってね」
「それにしても高橋さんってめちゃくちゃ頭イイって噂じゃん? 実際のところどうなの?」
私の言葉を聞いていたのかいないのか、まったく関係のない話をしはじめた桜井くん。
あえて無視したのだろうか、私の気持ちのこもっていない激励を。
「そう。やばいの、亜美」
興味なさそうに髪を弄んでいた沙世が、いきなり口を出してきたので驚いた。