夢みる蝶は遊飛する

「俺、稲垣先輩の代わりに、大会でスタメンとして出ることになったんです。俺もフォワードだから」

「そうなの? すごいね」

「桜井先輩が推してくれて。3年生の先輩たちも、思うところはあるかもしれないですけど、賛成してくれました」


それだけ彼の実力を、皆が認めているということだろう。

そうでなければ、3年生の最後の大会で、2年生をスタメンとしては出さない。

同時にこれは、宣戦布告でもある。

勝利を奪いに行くという。

記念試合にするつもりも、諦めるつもりもなく、ただ勝ちに行くのだ。


「頼もしいね」


私たちの学年が引退してからの部活を想像した。

きっと、彼が引っ張っていってくれるに違いない。

実力が認められないと嘆く部員は、ひとりもいないだろう。

その中に、私はいないけれど。


愛おしさがこみ上げてきて、ゆっくりと目を閉じた。

歓声が、聞こえてきた。


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