夢みる蝶は遊飛する
「だってさ、うちの学校公立でしょ。帰国子女くらいしか編入なんかさせないのに、亜美はあっさり入ってきたわけだし。編入試験の結果が相当良かったんじゃないかって噂、けっこう聞く」
そんな話は初耳だ。
自分に関する噂話が、知らないところで回っていたなんて。
私の受けた編入試験の難易度は、たいしたものではなかった。
前の学校で、全国トップレベルの集団から零れ落ちかけながらもなんとかしがみついている状態だった私でも、ある程度の自信を持って回答できたと思った。
でも、そんなことを言うべきではないことくらい私でもわかる。
「噂は結局、噂だよ」
曖昧に笑っておいた。
黙っていた桜井くんが、何を考えているかも知らずに。
「え、でも高橋さんやっぱりすごいって!」
能天気な声が、その微妙な空気を破った。
須賀くんが、なぜか得意気な顔で話し始めた。
「だって初日に当てられて即正解したのはW大の入試問題だし、この前のはA学院大じゃん。それから昨日のはH大だよ、H大!」
余計なことを言うな、という私の念は、どうやら須賀くんには届かなかったらしい。
どこまでも空気を読まない発言に、頭が痛くなった。