夢みる蝶は遊飛する
「それから、あのノートも見せてもらいました。今日の昼休みもミーティングだっていきなり言われて」
だから、須賀くんも昼休みが始まると同時に教室を飛び出して行ったのだろう。
一瞬だけ私に、気遣わしげな瞳を向けてから。
「あんなに俺たちのこと、見ててくれたんですか」
「見てるだけしか、私にはできないから」
一昨日、いつも見ているだけのくせにと岡田くんに言われたことに激怒したけれど、考えてみればたしかに私は見ているだけだ。
その他にもやることは山のようにあったけれど。
「俺がイリーガルスクリーン気味のときがあるだとか。ただ見てるだけじゃ、そんなことには気づきません」
スクリーンとは、攻めている側が守備側のプレイヤーを、自分の身体を使って動きを封じることで、イリーガルスクリーンとは、正しいやり方でそれを行わなかったときに課せられるファウルである。
「俺だけじゃなく、ひとりひとりについてあんなに気づくなんて、先輩じゃなかったらできないです」
「ありがとう」
私は、私にできること、すべきことをしたまでだ。