夢みる蝶は遊飛する
「『どんなにスピードがなくても、サイズがなくても、自分の限界を他人に決められたくない』これはある元NBA選手の言葉なんだけど、あたしも本当にそうだと思う」
それは以前、私が舞に教えた言葉だった。
舞がキャプテンとしても、プレイヤーとしても自信をなくしかけていたときに。
この言葉は、元NBAユタ・ジャズのポイントガード、ジョン・ストックトンのものである。
アシスト数、スティール数において、NBA歴代一の記録をもつ名選手。
父以外で私が尊敬している選手を挙げるとすれば彼だ。
「あたしたちは技術だって身体能力だって、そんなにすごい人が集まってるチームじゃない。毎日体育館が使えるわけじゃないし、顧問がバスケに詳しいわけでもない。だから環境だって整ってない。
でも、そのことで、戦う前から諦めたくない。このくらいがあたしたちのレベルなんだ、なんて、限界を決めたくないし、決められたくない」
強い瞳で、荘厳な雰囲気をまとって話す舞には、キャプテンとしての貫禄が満ち溢れていた。
「思いっきり、やれるだけやろう。T高がなめてかかってきて、最初からスタメン出さなかったら、暴れまくって余裕なくしてやらなきゃ!
悔いは残しちゃダメだよ。そんなものあったら受験勉強が手につかなくなるからね」
最後だけ悪戯っぽく笑った。