夢みる蝶は遊飛する

そして、円陣を組んで、いつも大会前に行儀式のようなものをする。

これをするのが初めての一年生たちにも説明し、全員の気持ちが落ち着いたところではじめた。


私も一緒になって肩を組みあい、声を出す。

みんな、つながっている。

温かくて、温かすぎて苦しかった。



その後は全員で大会の準備をした。

会場に持っていくものを、先生の車に積むのだ。

明日は現地で先生と合流する。


顧問の山田先生は、服装は少女趣味でも車は黒で大きかった。

男子の分の荷物はすでに積まれている。



忙しなく部員たちが動いている中、舞だけが体育館近くの水道の近くに座りこんでいた。

薄暗いけれど、よく見ると泣いているようだった。

時折肩が震えている。


駆け寄って抱きしめて、大丈夫だよと言いたいのをこらえて、静かに歩み寄り、背中を優しく一度だけ叩いた。

舞の戦いはもう、はじまっているようだったから、私は邪魔してはいけない、と。

そう思った。


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