夢みる蝶は遊飛する

こめかみを押えて俯く私。

どこから出したのか、爪磨きスポンジで爪の手入れをしている沙世。

何かを企んでいるような不敵な表情の桜井くん。

ダイナミックな身振り手振りで私に関する内容の熱弁をふるう須賀くん。

それを激しく頷きながら聴く柏木さん。


そして。


「よぉっし! 俺は決めたああぁっ!」


その迫力のある声に、半径10メートル以内にいた人間が全員こちらを向いた。

声の主である桜井くんは、私に右手の人差し指を突き付けて、高らかに宣言した。


「高橋さんっ、俺と勝負だ! 俺が勝ったら高橋さんはバスケ部のマネージャーになる、高橋さんが勝ったら俺がなんでも言うことを聞く!
引き分けなら、勝負がつくまでサドンデス! サドンデス! サドンデス!!」


どうしてサドンデスを3回繰り返したのかはわからないけれど、言っている意味は理解できた。

そんなの、答えは決まっている。

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