夢みる蝶は遊飛する
「まあ、しんみりしたくないし、そういうのがうちの部らしくて良かったけどね」
その瞳に映った月は、かすかに揺らめいていた。
そこに過った感情を読み取ることができなかったのは、暗闇のせいにした。
明日からは、バスケのない生活。
舞にとってはもちろん、私にとっても。
砕け散った夢を、その破片を集めてもう一度作り直し、必死に守ってきた。
それも舞をはじめとする仲間たちがいたからできたことだ。
感謝はもう、多すぎるほど伝えてきた。
言葉でも、態度でも。
そしてそれ以上に多くの想いを皆からはもらった。
もう十分だ。
分かれ道に差し掛かり、ここまで同じ方向だった数人と別れる。
そして考えてみると、ここから先は私と須賀くんの二人だけだ。
彼とこうして二人きりになるのは、あの日、私の誕生日以来だ。
つまり、彼が私に想いを伝えてくれたあの日。