夢みる蝶は遊飛する
「この桜井隼人は、アホっぽい外見と性格とは裏腹に、学年屈指の成績優秀者。
こいつの名前が載らないのは、割りばしがうまく割れないのと同じくらい珍しい!」
それは比較的よくあることなのでは・・・と思ったけれど、黙っておいた。
もしかしたらうまく割れないことが多いのは、私が不器用なせいかもしれないから。
どうでもいいことを考えて口をつぐんだ私の代わりに、固まっていた柏木さんの猛攻が始まった。
「ちょ、ちょっと待ってよ、なんで隼人がそこまで関わってくるの!? これはあたしと高橋さんの問題でしょ!? 説得しようとしてくれるのは嬉しいけど、誰もそこまで頼んでないっ!
だいたいあんたいつもお節介なの!」
意外だった。
私をバスケ部に入れようとあの手この手で攻めてくると思っていただけに、桜井隼人の手を借りようとはしないとことが。
「違う、これはバスケ部と高橋さんの問題だ」
桜井くんは誇らしげに宣言し、それに、と続けた。
「負ける気がしねえ」
どこかで聞いたような台詞を、彼はきっぱりと言いきった。
背筋を伸ばして断言するその姿に凛々しさを感じたものの、自分の置かれている状況を思い出して軽くため息をついた。