夢みる蝶は遊飛する

「お、亜美ちゃん笑った。まあまあそう怒るな。お前だって亜美ちゃんは困った顔より笑顔のがいいだろ。お前が困らせてるから笑わせたんだよ。
なんか文句ある?」


無駄にいい顔というべきなのか、無駄のない完璧な顔というべきなのかはわからないけれど、そんな顔でヒロくんは楽しそうに笑った。

須賀くんがなにか反論しようとしたところで佐竹先生が来て帰りのHRになったため、私たちは席についた。


たいした連絡もなくHRは終わり、清掃をしてから下校となった。

そこで再び須賀くんの声が。

先ほどの教訓を生かして、しっかりと周りを見渡してヒロくんがいないことを確認してから彼は頭を下げた。


「あのっ、テスト勉強、俺もできる限り手伝うから! あ、・・・・っていうか高橋さんのが頭いいや・・・でも! やっぱこれは俺の責任でもあるわけだから、何でも言って!」

「じゃあいちごオレ買ってきて」

「いちごオレね! わかった、買ってく・・・って水野かよ」


そう、先ほどの言葉は沙世のもの。

てっきり私の声だと勘違いしたらしい須賀くんだったけれど、頭を上げたところで気づいたらしい。

声だけでは区別がつかないのだろうか。

たしかに私も沙世も、あまり声は高くないけれど。

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