夢みる蝶は遊飛する

「役に立ちそうもない須賀に代わって、あたしからひとつだけ言っとくわ。桜井隼人は強敵よ。いくら亜美が頭良くても、厳しいかも」


沙世の正直な言葉は、私を少し落ち込ませた。


「でも、亜美はダークホースなわけだから、やってみなきゃわからない」

「そうそう! 俺もそう言いたかったんだって!」


沙世の発言にのった須賀くんだけれど、あいにく彼はそのようなことを一度も言っていない。


「だから亜美がこの学校でどのくらいのレベルかはわからないけど」


そこで沙世は言葉を切り、妖艶にさえ見えるような微笑みを浮かべて私を見すえた。


「総合トップ10に載るには、平均点がだいたい90点以上じゃなきゃまず無理ね」


思わず立ちくらみがした。

平均90点、だなんて。

小学生の時なら可能だったかもしれない、と遠い記憶をたどって現実逃避をしたくなった。

中学、高校と、皇ヶ丘にいた頃の私の成績は、壊滅的とまではいかないものの、どう見ても優秀とはほど遠かった。

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